1級着付け技能士実技Part 3:「着物着付け、帯結び」〜「採点」

Part 1、Part 2で持参品チェックと補整・長襦袢着付けの流れをお伝えしました。本記事はいよいよ、着付師としての総合技術が問われる最大の山場へ突入。

与えられた時間は「着物着付け、帯結び(草履まで)」の合計25分間のみ。このタイトな時間内で、正確さ、美しさ、そして着崩れない強度のすべてを完成させなければなりません。私は帯結びが遅い傾向にありまして・・・その分、着物の着付け時間をできるだけ短縮するように日々練習をしました。

流れを確認!

試験時間枠内容時間
実技着物着付け、帯結び(草履まで)25分
採点検定委員による採点25分

独学で挑む私たちは、「やり方の正解」が分からず不安になりがちですが大丈夫です。1級着付け技能士のお題であるふくら雀は、みんなやり方色々。私のモデルさんも「本当にみんな違うね」と面白がっていました。決められた基準は必ず守り、それ以外はあなたが確立した手順で自信を持って進めて良いのです。

自分だけの時間配分戦略を立てる

注意事項にもあるように「試験時間内に仕様どおりにできていないもの」は失格となります。何が何でも25分間で仕上げなければなりません。10分・20分とアナウンスが入るので目安にしましょう。

分単位のタイムマネジメントを確立せよ

着物10-11分、帯結び10-12分、草履を履かせるのに30秒〜1分など、必ず事前に自分に合った配分を決め、練習で体に染み込ませてください。30秒でも1分でも最後に余裕が残れば、手直しをすることができます。

着崩れない実用性と美しい芸術性を追い求める

モデルさんにはどこまで手伝ってもらえる?

(12)モデルは、試験中作業の手助けをしてはならない。ただし、下前の衿を押さえること、帯枕の紐、 帯揚げ、帯締め及び帯のて先を持つことは可。

着付け職種技能検定 1級着付け(着付け作業)実技試験問題 注意事項

注意事項に書いてあるとおりです。ついつい、着物を着せられてる時って手伝いたくなっちゃう人が多いので、気をつけましょう。

仕様は必ず確認!寸法は必ず合わせる!

仕様通りになっていることは絶対条件です。

【3】仕様 受検者持参品を使用して、人間モデルに中振袖(ふくら雀)の着付けを行う。
・おはしょり芯を使用しない。
・伊達衿(又は比翼衿)を使用する。
・帯締めは、本結びにする。
・帯揚げの結び方は、いりくとする。
・お太鼓のやまは箱ひだにする。
・羽根の形は、自由とする。ただし、背に添わせること。

寸 法 の 目 安
・半衿の出具合は、衿合わせの中心で2cm~2.5cmを目安とする。
・おはしょりの長さは、5cm~8cmを目安とする。
・垂れの長さは、8cm~11cmを目安とする。

着付け職種技能検定 1級着付け(着付け作業)実技試験問題【3】仕様

ただし、「減点」で済むものもあるのでこちらも確認しておきましょう。

(14)試験時間内に仕様どおりにできていないもの、クリップを取り忘れているもの、草履を履かせていないもの及び衣裳敷の上で草履を履かせたものは、失格とする。ただし、おはしょり芯を使用しているもの、帯締めが本結びでないもの、帯揚げの結び方がいりくになっていないもの、お太鼓のやまが箱ひだになっていないもの及び羽根が背に添っていないものは、減点にとどめる。

着付け職種技能検定 1級着付け(着付け作業)実技試験問題 注意事項

私は25分で完了しない練習時期が続き、「『いりく』じゃなくても最悪いいや!」と割り切りました(と思ったら突如25分の壁を突破できるようになりました、不思議ですね)。「羽が背に添っている」の正解はいまだにわかりません。初め、「羽が『肩に』添っている」だと思い込んでいて悩んでいました…仕様はちゃんと読みましょう笑

仕上げたら草履を履かせて最終仕上げ

「衣裳敷の上で草履を履かせたものは、失格とする」

「衣裳敷の上で草履を履かせないこと」は、着付け作業が完了する前に草履を履かせることがないようにしたもので、草履を履かせた後の簡単な手直しは、試験時間内であれば構わない。

着付け職種技能検定 1級着付け(着付け作業)実技試験問題 注意事項

試験終了2-3分前頃から草履を履かせ始める方が出てきます。モデルさんの足元まで衣裳敷を折りたたみ、モデルさんに草履を履いてもらう人が多いように感じました。そのまま衣裳敷を片付け、最終手直しを行いました。

ちなみに草履は「布製又は皮製(エナメルも可) 爬虫類、不祝儀用等は不可。」との指定があります。ご祝儀に履く草履であれば大丈夫でしょう。


最後の採点時間は会場外へ…検定委員によるモデル採点

全てが終了した後の採点は、モデルさんのみを残して受験者は会場の外で待ちます。この時間が本当に辛かったです。一体、モデルさんは何を採点されるんだろう・・・。そしてこの採点について当時の私は情報を見つけることができなかったので、これを見たこれから受験される方に役立つように、ここに書き記します。

① 定規で測られる「寸法」のリアリティ

  • 採点箇所: 検定委員は定規で寸法を測定
    • 襟元: 半衿の出具合をチェックしていたと思われます。仕様通りであれば2㎝~2.5cm目安です。
    • 後ろの襟も測っていた、と私のモデルさんは言っていましたが、ふくら雀の羽のサイズが同じかを見ているのでは?と思いました。
    • おそらくおはしょりも測られていることでしょう。

検定委員はPart1でも書いたように、4-5名で1受験者を複眼チェックしますのでこの寸法もみんなに測られたとモデルさんが言っていました。それだけ仕様に書かれた「寸法」は大事ということですね。

② 歩行審査も!?

モデルさんは部屋を半周歩かされたそうです。
「歩き方を見るわけではない」とアナウンスされますが、これは「歩いている間に着崩れてこないか」、そして「裾捌き(すそさばき)がしやすいか」を確認しているのではないかと思います。

採点が終わったら

採点が終わると検定員の方は退室され、後片付けに入ります。
ここで大多数の方は振袖姿の写真撮影をしていました(私たちはせず)完全撤退までに30分くらいだったかと思います。袖だたみにして早めに会場を出ることを選びました。

💖 最後に:独りで挑むあなたへ。私がこの記事を書いた理由

私がこの記事を書こうとした理由は、私自身が独学受験者として「誰も教えてくれない不安」を抱え、それに押しつぶされそうになった経験があるからです。試験概要からも情報を得ることはもちろんできますが、限りがあります。例えば所持品のチェックポイントやモデルの採点などは、事前に知っておきたいと私が試験日に思ったポイントです。

そんな思いから、私の経験が、今まさに独りで奮闘しているあなたの「道しるべ」となり、不安を少しでも解消できる手助けになればと願っています。


Guide de Wa きもの着付け 出張・稽古


麗(うらら)

Guide de Waきつけ教室オーナー

東京着付アカデミー着付プロ /一般社団法人国際着物ドレスアーティスト協会認定着物ドレスアーティスト /特定非営利活動法人 日本理美容福祉協会認定福祉車いす着付師プロ (※介護職員初任者研修修了)

PAGE TOP